『引き寄せの法則』って本当にある?

『引き寄せの法則』という言葉を聞いたことがありませんか。
良いことも、悪いことも、そのことを意識することで、現実化するというものです。

我が家では、とても不思議な引き寄せがあります。
10年位前、私が派遣社員として勤務していた会社の正面に、とても大きな建物が建設され始めました。
看板を見てみると、民間ではありますが、新しい大きな病院ができる予定でした。
当時、発達障がいと言われていた次男が高等専修学校に通っていて、将来の進路について相談するところもなく、とても困っていました。現在では就労移行支援事業所が多くできていますが、当時はまず学校を卒業して障がい者を対象とするハローワークで職業訓練を受ける準備をするか、大学などに一旦進学し時間をかけて進路の検討をするかといった見通しのたたない状況でした。進学といっても専修学校の授業では充分な学力もついておらず、高額な奨学金を借りて上位の学府を目指しても、本人にプラスになると思えない時代でした。

そんな中で、大きな病院にはたくさんの仕事があり、また、いろいろな患者さんと向き合っている方々が勤務しているので、一般の企業と違い、障がいと言われる人の特性を理解しやすい人も多少おられそうだなと思いました。また少人数の職場と違い、多くの職員さんがシフト勤務されるので、複数の雇用がある職場は、1人日の仕事量がこなせない職員のフォロー体制も、しっかりしてるのではないかなと、ふと思いました。もし、こういった職場で、障がいのある人が清掃などの仕事ができたりするといいな・・・そんな風に、建築中の現場を毎日眺めていました。

結局、進学も就職も決まらないまま就労専修学校を卒業した次男は、当時の障がい者支援である相談員の紹介で、精神科クリニックが運営するデイケアへ2年ほど毎日通所をしていましたが、自立に向けた力がつく様子も見受けられないまま歳を重ねることに疑問を感じ、就業移行支援事業所で2年間の職業訓練を受けることになりました。アクセサリーなどの小物作りやテープ起こし、清掃業務の訓練をしたり、また、就職に必要な面接の練習や履歴書書きの練習をしていましたが、就職は決まらずさらに訓練期間の半年延長されました。このまま決まらなければ、この作業所で同じ訓練を続けるしかないかなと思っていた矢先、
次男「来週○○日から仕事に行くことになった。」
私 「え?いつの間に面接に行ったの?試験があったの?」
次男「先週、面接に行った」

普段着のまま、いつの間に面接にいったんだろう・・・

私 「どこの会社に仕事に行くの?何か書類もらったの?」
次男「えっ・・・と、これをもらった・・・」
私 「え、ホント?!」

次男の話が理解できず、この面接を勧めてくれたという事業所のスタッフさんに、電話をかけて確認したところ、5年以上前に私が『障がいのある人がこんな大きな病院で、働けたらいいだろうな』と思ったあの病院の名前でした。
実際に入職してから、仕事に慣れるまで、はじめは短時間勤務で徐々に慣らせていただき、指導をして下さる上司がこまめに声かけをして下さるとても恵まれた職場でした。上司は、時に厳しく指導されたり、また内緒で私に連絡をして下さることもあります。周囲の理解ある職員の皆さまと一緒に働くことで、少しずつ自信もつき、新たな友人関係を構築できるようになりました。今年は自ら企画して、一人旅をしてくることもできるようになり、確実に自立していく姿を目の前にして、とても頼もしく感じています。

さて、話が離れてしまいましたが、これは「○○になったらいいな・・・」と思ったことが現実化し、まさに「引き寄せの法則」が成功した事例なのですが、具体的に毎日毎日、私が「この病院に次男が就職できますように」と祈ったかというと、実はそうではありません。
障がいを持つ子の親は、「親亡きあと」を常に意識しています。純粋に「親亡きあと」に息子が自分の力で信頼できる人間関係を構築し、自立して生きていくための最初の職場として、理想の職場だなと思いました。でも、一度もこの病院の話を次男にしたことはありません。障がい者の雇用をしていることさえ知りませんでした。また次男自身も、面接を受けることも、ひと言も家族に告げてはいませんでしたが、自らの意思と努力をしていました。

そこに、賃金がいくらだとか、他の求人先と比較したり誰かの顔色を伺ったりという思いは、私も息子もありませんでした。

実は、我が家では『引き寄せの法則』による現実化を、良くも悪くもいくつも経験しています。
ただ、本当に毎日毎日、その願いの実現をイメージし続けるかというと、我が家でそうではありません。

この『引き寄せの法則』で良い結果が出るコツ(要素)・・・があります。それは
「小我ではなく、大我(たいが)であること」
自分だけが得をするような個人的な我欲ではなく、自分以外の人を幸せにしたいと思うとき、より良い現実化が現れてきます。いわゆるご神仏が働いて下さいます。そして、仏教の教えのひとつである『足るを知る(不平不満を思わず、現状を感謝して受け入れる)』という感謝の想いを、毎日御先祖様や身近に感じるご神仏に向けることで、このエネルギーが循環していきます。

一番大切なことは、根底にある本心、動機です。
願い事を叶えるために表向き「大我」の願い事を語っても、その裏に損得勘定や誰かや何かに対して調和を乱す感情的なものがあると、その願いは最終的に良い結果をもたらすとは限りません。私たちの根底にある○○が磁石のように、その結果を引き寄せてきます。人間関係しかりです。

うまく『引き寄せ』ができないという方は、振り返ってみてください。

実際、現代社会を生きていくうえで、私たちの言動には本音と建て前が混在します。また、常にいろいろな状況で、感情を乱されることもあり、いつも冷静に自分を客観視することは難しいことですが、私たちが今何かを発したり、願ったりするその根底にあるものが、『他者への愛と全体の調和』を起点として発しているものかということをひとつの基準として過ごすことが、良い流れとなって現れてくるように思います。