長生きの意味
寒波の雪が少し落ち着いてきた今日、
実家の父と一緒に、改宗の相談のため、
昨年から、お願いしていたお寺に、お伺いしました。
両親とも、いつお迎えがきてもおかしくない年齢ですが、
それまでの宗派の檀那寺もなく、いざお葬式となったとき、
葬儀屋さんから手配される見ず知らずのお坊さんに、
お経を上げて頂くことに違和感があって、
今のうちから、お寺との御縁が欲しいと思っていました。
けれども、どうしてもピンとくるお寺が見つからずにいた所、
昨年の秋、お尋ねしたお寺のご住職と坊守さまの御言葉に
とても、引かれるものがありました。
実家の宗派とは、違っていましたが、
そういえば、父は次男で、私も一人っ子で嫁いでいるので、
最後は、永代供養で終わることになります。
そういう意味では、改宗することに何の支障もないことに気付きました。
年が明け、長期で入院している母と一緒に過ごそうと、
連休に外泊許可をもらいましたが、
出かけようという前日、母が病院のトイレで転び、
後頭部を6針縫うという怪我をしました。
それでも、どうにか短期間の外出を終えた数日後、
今度は転んで大腿骨を骨折したため、
整形外科の病院に転院することになりましたとの電話。
外出先の父に連絡するも、
携帯電話の着信音がオフで連絡つかず。
急いで仕事を早く切り上げ、ひとりで転院先に向かいました。
主治医の説明では、
高齢者によくある股関節と大腿骨の付け根の骨折で、
痛みも強く出血もあるため、翌日インプラント手術を
するとのこと。
87才と言う高齢でもあり、
麻酔のリスク、輸血のリスクなど説明を受けながら、
やはり最悪のことも覚悟しなくてはと思いました。
手術の当日。
父と一緒に病院に向かい、手術室まで母を見送りました。
手術が終わるまでの時間、避けては通れないこととして、
以前から私が持っていた、お葬式に関する本を父に見せました。
お葬式には参列することがあっても、
出す側になった経験のない父には、知らないことが多々あって
この本の中で、考えさせられることがたくさんあったようです。
手術は思ったより早く、無事に終わり、安堵しました。
翌日にも、心配していた痛みも少なく顔色も良い母の顔を見て、事なきを得たのが昨日のこと。
そして、今日が昨年からお願いしていた改宗の相談の日でした。
ご住職と坊守さまと、父は初対面でしたが、
心地良い会話の中、ふと自分が親族の中で、
一番長生きしていることに意識が向いたようです。
母は、脳梗塞でマヒが残って以来、
「生きているのがしんどい。早くあの世に行きたい」と
よく口にするようになりました。
自分の動きがままならない。
生きる上での希望や、生き甲斐が見つからない。
高齢でなくても、身体にマヒがなくても
生きる意味を見いだせないほど辛いことはないと思います。
「まだ、やらなくちゃいけないことが残ってるから、
生かされてるんだよ。まだあちらに行くのは
早いって言われてるんだよ。」
といつも母に伝えてきました。
父も最近、自分は何のために生きてきたのか、
自分の役目は何なのかと言うようになりました。
「生まれてくるときに約束してきたことを
やっておかないとあの世に行って後悔する。」と
私がいつも言っていたからでしょう。
改宗についての段取りと次の予定が決まり、
今日は、母の病院にも寄らず、まっすぐ帰り着きました。
母との外泊からはじまり、色々なことが起こりすぎて、
とても慌ただしかったこの1週間。
とても疲れたであろう父が、床につこうとした時、
ふと、言いました。
「なぜ、自分がみんな(兄弟)より長生きしたか、今わかった。
○○家を改宗することが、おれの役目だった。
だから、この怪我や手術(母の)はお知らせだったんだ。
教えてもらうことができて、幸せだよ。良かった。」
今さらながら考えてみれば、この改宗という決断は、
同じ先祖をもつ親族の中で、
たったひとり父にしかできないことでした。
それも、母の突然の手術が、
目の前の現実を強く意識させたのでしょう。
どの宗派が良いとか悪いとか、そういったことではなく、
この家系にとっては、この改宗がとても意味あることでした。
あぁ良かった・・・。
同じ認識をしてもらえたことの嬉しさと、
思いがけず、この年齢で自ら生きる意味を見つけてくれたことに感動しました。
庶民の私たちには、
社会に大きな業績を残すことはできませんが、
たくさんのご先祖様からしてみたら、この大きな決断が、
何にも勝る喜びをくれる大きな貢献なのだと思います。
きっとそれは、魂に刻まれる大きな宝だと思います。
母のように、生き甲斐を見失っている方も、
決して少なくないと思います。
けれども、意味があって生かされている。
母は、その姿で父に気付きを与えてくれました。
あぁ、良かったぁ・・・・本当に良かった・・・・。
大きく胸をなでおろすような気持ちになりました。
あとは、私がしっかり頑張るからね。
本当に、とても学びの多い、一週間でした。